もはや日本で寿司を食べるには、回転寿司は欠かせないものとなっている。
寿司は日本において2つの方向性に別れた。回る寿司と回らない寿司である。回る寿司とは回転寿司のこと、回らない寿司とは高級な寿司のことである。
寿司はもともとお手軽なファーストフードであった。東京がまだ江戸といわれていた頃は、西部開拓時代のアメリカみたいであり、厳しい自然と戦い、江戸の街を広げていったのである。手近な海産物とコメを組み合わせた食べ物が寿司だった。
江戸前の寿司というのは、江戸の近くでとれた魚で作った寿司という意味である。ずっと江戸の庶民に親しまれていた寿司であるが、東京の都市化が進むにつれ、環境汚染が深刻なものとなり、東京の近くで新鮮な魚がとれなくなってしまった。そこで日本各地や世界中から魚を仕入れる必要があり、寿司の値段はどんどん高騰していったのである。
高級寿司店では値段はわからない。時価である。寿司職人はいいサービスをしたいために、そのお客さんをよく知りたい。なので会員制サービスのような感じになる。高級寿司店には入れることは一つのステータスシンボルなのである。
だがこれでは気軽に寿司を楽しむことができない。そこに目をつけたのが回転寿司である。工場で使用されていたベルトコンベアを利用することにより、寿司を素早くお客さんの元に届けることに成功したのだ。皿の色によって値段は決まっているので、会計は正確だ。皿数と単価をかけ算すれば、すぐに値段が出る。
これは寿司にとって大きな革命となった。庶民が寿司を取り戻したといってもいい。これにより寿司の自動化に成功した。
鮮度の管理も簡単で、皿にのせられた寿司がベルトコンベアのコースを何周かしたら破棄すれば良い。お客さんの入り加減でどれくらい寿司を並べるべきなのかというさじ加減が、また新たな課題となってきている。
お客さんは今までのように、寿司職人にたいして注文することも可能だ。注文された寿司はベルトコンベアにのってあなたのテーブルにやって来る。逆に寿司職人側から、メニューを教えてくれることもある。
高級寿司のサービスを取り入れようとしているのだ。
寿司文化は産業化工業化した日本社会において、このように継承されているのだった。